相続に関する基礎知識
相続手続きの流れ
相続開始の前に
相続開始後の手続き
被相続人の死亡
7日以内
- 死亡届の提出(被相続人の最後の住所地の市・区役所)
- 死体火葬許可申請書の提出
14日以内
3ヶ月以内
4ヶ月以内
10ヶ月以内
1年以内
亡くなられた方の法定相続人が誰かを調査します。
相続が発生すると、亡くなられた方の財産は相続人に自動的に承継されます。遺産分割が終わるまで、亡くなられた方の財産は、相続人全員の共有とされるのです。したがって、遺産分割をする場合、相続人全員の合意による必要があり、相続人が一人でも漏れていると、その遺産分割協議は無効になって、最初からやり直しをすることになります。
ほかに相続人がいないと信じて遺産分割協議を行ったとしても、相続人がいることを知りながら一部の相続人を無視して遺産分割協議を行ったとしても、法律的にはその遺産分割協議は無効になってしまうのです。
相続人調査の方法
相続人調査は、亡くなられた方が生まれたときから亡くなるまでの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得することから始めます。さらに、亡くなられた方の子の戸籍謄本も集めます。戸籍をたどることによって、法定相続人が誰なのかを確定していくことになります。
戸籍謄本・除籍謄本は、本籍地の市区町村の戸籍担当窓口に直接請求するか、郵送で請求することにより、取得できます。本籍地の役所以外では取得できません。
- ■ 亡くなられた方が親である場合
- 亡くなられた方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を調査し、ほかに子どもがいないか調べます。
- ■ 亡くなられた方が祖父母である場合
- 亡くなられた方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を調査し、その子どもを調査します。亡くなった子どもがいる場合には、さらにその方の孫、ひ孫を調査します。
- ■ 亡くなられた方が兄弟である場合
- 亡くなられた方の親が生まれてから亡くなるまでの戸籍を調査し、兄弟が何人いて、誰なのかを調査します。兄弟のうち、亡くなられた方がいれば、さらにその子どもを調査します。
相続人の調査は、手間もかかりますし、親族関係が複雑な場合には、必要な戸籍謄本等を取り寄せるのが難しいこともあります。
弁護士は、裁判手続に必要がある場合等に、戸籍謄本や住民票などを取り寄せる権限を与えられています。当事務所では、遺産分割などの前提問題として、相続人調査についてもお手伝いしています。
亡くなられた方と親族関係にあるとしても、必ずしも相続人になれるとは限りません。
民法上、誰が相続人になれるか決められています。遺された親族が誰であるかによって、相続できる人とそうでない人が異なってきます。
法定相続人の優先順位は、@配偶者、A子、B父母、C兄弟姉妹となります。
- ■ 亡くなられた方に配偶者と子がいる場合
- 配偶者と子が2分の1ずつ相続します。
- ■ 亡くなられた方に配偶者と父母がいる場合
- 配偶者が3分の2、父母が3分の1を相続します。
- ■ 亡くなられた方に配偶者と兄弟姉妹がいる場合
- 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
- ■ 亡くなられた方に配偶者のみいる場合(子も父母も兄弟姉妹もいない場合)
- 配偶者がすべてを相続します。
- ■ 亡くなられた方に配偶者がなく、子、父母、兄弟姉妹がいる場合
- 子どもがすべてを相続します。
※なお、同じ立場にある人が複数いる場合には、相続分をさらに按分して相続することになります。
たとえば、亡くなられた方に配偶者と子どもが2人いる場合、配偶者の相続分が2分の1、子どもそれぞれの相続分が4分の1(2分の1×2分の1)となります。
相続される財産
プラスの財産
- 不動産(土地、建物)
- 有価証券(債券、株券、投資信託)
- 現金・預貯金
- 家庭用財産
- その他(自動車、未支払年金、未収配当金、損害賠償金、生命保険、簡易保険、退職金)
マイナスの財産
- 本人の負債
- 保証人としての負債(身元保証を除く)
- 公租公課で未払いのもの
財産調査の方法
亡くなられた方の生活状況を把握している場合には、相続財産を調査することは比較的容易ですが、亡くなられた方の生活状況を把握しておらず、一部の相続人が財産を秘匿し、相続人間で意思疎通できないような場合には、財産調査は大変な困難を伴います。
弁護士は、弁護士照会(弁護士法23条)などの手段を駆使して、また、審判・訴訟手続においては裁判所の調査嘱託などの手続を通じて、被相続人の財産を調査することができます。
以下では、ご参考までに財産調査の方法をご紹介しますが、調査の時間がとれない場合や調査が難しい場合には、弁護士にご相談ください。
不動産
- 亡くなられた方の居住地や実家など、関係するところで、名寄帳(固定資産税を把握するために市役所・区役所でその管轄地域内にある不動産をまとめたもの)を取り寄せてみる
- 手元資料を探して、法務局で登記簿謄本を取り寄せてみる
預貯金
- 銀行や郵便局の通帳を見つける
- 確定申告をしているのであれば、確定申告書を見る
- 居住地や勤務地の近くの金融機関に問い合わせる
- 弁護士照会
- 相続人の一人が明らかにしない場合には、調停手続きで調査嘱託してみる
株式・有価証券
- 証券会社からの通知を探す
- 相続人の一人が明らかにしない場合には、調停手続きで調査嘱託してみる
- 弁護士照会
負債
- 亡くなられた方の書類や郵便を探す
- 取引銀行に問い合わせしてみる
現金
相続財産には、現金、不動産、預貯金などのプラス財産だけでなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も含まれます。亡くなられた方に負債が多く、相続したプラスの財産で返済しても足りない場合に、相続人が必ず亡くなられた方の負債を引き継がなければならないとすれば、相続人にとって過大な負担となり、相続人自身の生活を圧迫しかねません。そのため、マイナスの財産が、プラスの財産より多い場合は、亡くなられた方の財産の承継をしないという選択をすることができます。
相続をするかしないか、その方法は下記の3つです。
単純承認
被相続人の財産の一切を継承する方法です。この場合は特別な手続きをする必要はなく、相続開始後3ヶ月以内に他の手続きをとらなければ、自動的に単純承認をしたとみなされます。
相続放棄
相続人の財産を放棄し、一切の財産を相続しない方法です。被相続人の遺産よりも借金の方が多い場合、この方法を取ります。相続人が被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出し、それが認められれば相続人ではなくなります。
※第1順位の相続人(妻や子)が相続を放棄した場合は、その人ははじめから相続人でなかったことになるので、第2順位の相続人(両親)が相続人となり、第2順位の相続人が相続を放棄すれば、第3順位の相続人(兄弟姉妹)が相続人となります。相続人になる全ての者が相続放棄をする必要がありますので、ご注意ください。
※被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に相続財産の調査が終わらずに、相続放棄をするかどうかの判断がつかない場合には、裁判所に申し立てることにより、相続放棄の申述をする期間を延長してもらうことができます。
限定承認
相続で得た財産の範囲内で借金を返済するという条件で相続を承認する方法です。仮に財産を清算した結果、借金だけしか残らないような場合でも、不足分を支払う必要はありません。逆に、借金を返済して財産の方が多ければ、差し引いた財産については取得することができます。プラスの財産が多いのか、マイナスの財産が多いのかが分からない場合、有効な相続方法です。
限定承認の手続は、相続開始を知った時より3ヶ月以内に、家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出して行います。
限定承認のデメリットとしては、手間と時間がかかること、法定相続人が複数いる場合には必ず全員で手続をしなければならないことがあげられます。
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